1月, 2020年

賃金の時間単価の計算はどうなる?

2020-01-29

案外区別していない時間単価の出し方

 一般的に給与計算において時間単価を出すことはよくありますが、用途によって時間単価の出し方が決まっています。
「平均賃金」といえば全産業や企業内における全労働者平均といった意味で使われますが、労働基準法における平均賃金は全く違います。また、年次有給休暇の日額や時間単価、残業計算の時間単価の出し方などそれぞれ法に定めがあります。

労基法の平均賃金を使う時とは

 平均賃金とは「算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額をその期間の総日数で除した金額」を言います。月給、週給は「1労働日当たりの賃金や日給額ではなく休日も含めた1生活日当たり賃金を算出します。
日給、時間給の場合は前3か月分を労働日数で除し、その6割とされます。
 平均賃金が必要なのは、
① 解雇予告手当を支払う場合……30日前に予告をしない使用者は30日以上の平均賃金の支払いが必要です。
② 使用者の責により休業させた時……会社の都合で休業させた時、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければなりません。
③ 年次有給休暇を取ったとき……年次有給休暇に対する支払いは就業規則等で平均賃金で支払う旨を定めておけば平均賃金での支払いになります。
④ 業務上災害に対し災害補償を行う場合……休業、障害、遺族、葬祭、打切補償、分割補償等の補償の給付基礎日額の計算に用いられます。
⑤ 減給の制裁……懲戒に該当した等、「制裁の減給を行う時1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払い期間に総額の10分の1を超えてはならない」とされています。

年次有給休暇取得日の賃金計算

① 平均賃金
② 所定労働時間に支払われる通常の賃金
③ 健康保険法の標準報酬日額相当額
一般的には②が多いでしょう

残業代の賃金計算

月給制の場合は1年間における総労働時間を12か月で除し、1月平均所定労働時間を月給で除した額が時間単価となります。

礼儀正しさが企業に良い効果をもたらす その差は2倍!

2020-01-28

人を叱るときどんな叱り方をしていますか

 2019年末「人を叱るときは人前で」という記事が話題を呼びました。時代の流れや環境の変化とともにそれぞれに対応したやり方があるのでどれが正解のやり方と断言はできませんが、礼儀正しく接する、ほめることが企業のパフォーマンスを上げる研究結果をご紹介します。

叱るときも礼儀が大事との結果があります

 2007年の米フロリダの研究で、被験者らが自分たちに敬意が払われていないと感じると、彼らのパフォーマンスは低下するというものです。2つのグループに分け片方のグループをけなした後、単語のつづりを入れ替えるパズルをさせると、けなされたグループの成績はけなされなかったグループより33%低下します。また、片方のグループを叱責したのちブレーンストーミングをさせる実験では叱責されたチームはされなかったチームより58%もアイディアの出が悪くなりました。
これだけではありません。けなされたり、叱責されているところを目撃するだけでもパズルの成績は25%悪化し、ブレーンストーミングでも45%成績が悪くなりました。これが実際の企業内で起こったら生産性が下がり大変なことです。逆に「礼儀正しく」接するとよい効果が生まれます。部下に礼儀正しく接したリーダーは2倍もリーダーとして認められる確率が高くなります、また礼儀正しいと評価される人物はそうでないと評価される人物より13%パフォーマンスが高いとの結果が出ています。礼儀正しさが心理的安心感につながりこれだけの差が出るとされています。

外国人は捉え方が違う場合もあるので注意

外国の方も多く働くようになっている現代、日本人では人前で叱責したり無礼な態度に対し我慢で終わらせることも、外国の方では考え方が違うので注意が必要です。アジア、中東では「人前で怒るとその人の尊厳を侮辱することになる」と人前で叱責することはご法度とされているようです。
日本人でもパワハラといわれてしまうことがあります。仕事をしているとカッと来ることもありますが、指導を行うとしても礼儀を忘れないで対応することが重要です。

在職老齢年金制度の見直し ~60~64歳は年金支給額増加へ~

2020-01-27

在職老齢年金とは?

昨年末、在職老齢年金制度の見直しに関する報道が相次ぎました。
 在職老齢年金とは、老齢厚生年金受給者が厚生年金被保険者である場合、総報酬月額相当額(過去1年以内に受けた給与と賞与合計÷12)と基本月額(老齢厚生年金額)の合計額が一定額を超えた場合、超えた分の全額又は1/2が年金支給額から減額される制度です。なお、国民年金の老齢基礎年金は支給停止されません。

在職老齢年金の支給停止額の計算法

在職老齢年金は、65歳以上(高在老)と60~64歳(低在老)で計算法が異なります。
高在老は、総報酬月額相当額と基本月額の合計額が47万円を超えた場合、超えた額の1/2が年金支給額から減額されます。
総報酬月額相当額と年金月額の合計額が47万円以下の場合は支給停止されず、全額支給されます。
一方、低在老は複雑で、①総報酬月額相当額と年金月額の合算額(28万円基準)と②総報酬月額相当額(47万円基準)の2つの基準があります。
支給停止額の計算方法は次の通りです。
1.①≦28万円→支給停止なし(全額支給)
2.①>28万円+②≦47万円以下
基本月額≦28万円→①28万円超過分÷2
 基本月額>28万円→②÷2
3.①>28万円+②>47万円
 基本月額≦28万円 
 →(47万円+基本月額-28万円)÷2
+(②-47万円)
 基本月額>28万円
 →47万円÷2+②の47万円超過分
※基準額28万円と47万円は毎年見直し

在職老齢年金の見直しは低在老のみ

年金が全額停止される場合もあり、高齢者の就労継続意欲を削ぐとの批判を受け、在職老齢年金の見直しが検討されました。
今回は60~64歳の低在老の支給停止基準を、65歳以降の高在老の基準に引き上げるにとどまり、高在老は変更されない方向となりました。

中小企業関連の補正予算案を閣議決定 ~ものづくり補助金が大幅増~

2020-01-24

令和元年12月に令和元年度の補正予算案が閣議決定されました。中小企業庁より地域・中小企業・小規模事業者関連の予算案が公表されました。中小企業が抱える「経営者の高齢化」「人手不足」と今後も慢性的に抱える課題を重視した取り組みになっています。更には働き方改革や社会保険適用拡大、インボイス導入など相次ぐ変更への対応も考慮しています。

事業承継・再編・創業等で新陳代謝の促進

事業承継を契機とした生産性向上や経営資源引き継ぎ型の創業、事業承継時の一部廃業を支援に盛り込んでいます。また、事業承継時に経営者保証を不要とする新たな信用保証メニューの創設や、専門家の確認を受けた場合に保証料を減少させる支援もあります。

生産性向上・デジタル化

働き方改革やインボイスなど法制度変更への対応による後手になりがちな生産性向上施策を継続的に支援します。毎年恒例となったものづくり補助金やIT補助金、小規模事業者持続化補助金を一体運用する内容です。また、AI導入を支援する多面人材の育成や普及も行います。予算額が令和元年補正3,610億円となっていますが、単年ではなく複数年にわたる予算と考えられます。

地域の稼ぐ力の強化・インバウンド拡大

地域経済を発展させる企業を重点的に支援し、イノベーションによる新事業展開を促進します。大企業の中堅人材による地方での起業や中小企業への就職を後押しし、生産性向上を図ります。地域や社会課題を解決するビジネスモデルや地域における創業も支援します。

経営の下支えや事業環境の整備その他

マル経融資を含む日本政策金融公庫による政策金融として205億円もあります。昨年日本を襲った台風被害からの復旧・復興や強靭化対策として令和元年度の補正として375億円の予算があります。
毎年3月ころから動き始めます。中小企業庁などのホームページで募集の発表がありますので、情報収集には注意しておきましょう。

週40時間を超えても 残業代をつけなくてよい業種がある って知ってる?

2020-01-20

特例措置対象事業場の「特例」とは

労働基準法では休憩時間を除き1週40時間の法定労働時間が定められていますが、事業場の規模や業種で週44時間まで残業時間とされない事業があります。特例措置対象事業場といい、1週間に44時間以内であれば時間外割増賃金はありません。
 1週44時間を超えたときは残業代の対象ですが、1か月単位の変形労働時間制を導入しておくと1か月の中で繁忙期と閑散期がある場合には、平均して一週間当たりの労働時間を44時間以内にすればよいことになります。変形制を導入しないときは例えば週6日の勤務のうち月から金までを1日8時間、土曜日は4時間と設定する場合、月から土まで1日当たりの労働時間を7時間20分とする場合などがあります。

特例措置対象事業場はどんな業種が対象?

①常時使用する労働者が10人未満の事業場(10人未満とは会社全体で100人いたとしても1つの事業所や支店の従業員が10人未満であれば対象になります)
②常用使用するとは正社員のみならずアルバイト、パートでも定期的に勤務をしていれば常時使用する従業員に該当します。
③対象となるのは以下の業種です。
・商業(卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、駐車場業、不動産管理業、出版業〈印刷部門を除く〉その他の商業)
・映画・演劇業(映画の映写〈映画の製作の事業を除く〉、演劇、その他興行の事業)
・保健衛生業(病院、診療所、保育園、老人ホーム等の社会福祉施設、浴場業〈個室付き浴場業を除く〉、その他の保健衛生業)
・接客娯楽業(旅館業、飲食店、ゴルフ場、娯楽場、公園、遊園地、その他の接客娯楽業)

4時間の差を見てみるとこれだけの差!?

1週当たりは一般的な法定労働時間40時間との差は4時間ですが1年で208時間の差が出ます。特例は1事業所9人までなので1事業所、最高46,852円×9人=421,668円の差が出てきます。10人未満事業所を多く抱える企業では大きな差額になるでしょう。特例対象事業場として認められる要件を満たしていても週40時間を適用している企業は8割にものぼります。知らない場合も多いでしょうが、人手不足時代の昨今、他の企業に見劣りしないためにも40時間設定で運営を続けていいかもしれません。

正社員化コースだけじゃない! 使いやすい健康診断制度コース

2020-01-06

キャリアアップ助成金健康診断制度コースとは

助成金の中で花形助成金といえば2019年度も継続だったキャリアアップ助成金正社員化コースです。しかしキャリアアップ助成金の中にもほかのコースがあることをご存知ですか? 今回はキャリアアップ助成金健康診断制度コースをご紹介します。
健康診断制度コースは期間を定めて働いている労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施すると38万円(条件を満たすと48万円)の助成金が支給されます。

どんな人が対象になるか?

雇用保険に加入する必要があるので期間の定めがある雇用契約を結んでいる人で、週20時間以上30時間未満勤務の従業員です。そのほかフルタイム勤務でも期間の定めのある雇用契約を結んでいて、雇い入れてから1年未満の勤務期間の人も対象です。1年以上雇用していると通常の定期健康診断を行う必要があるので助成金の対象外労働者になります。また事業主の3親等内の親族も対象外です。イメージとしては事業主関係者でないパートの方に新たに定期健康診断を行ってあげると受給できることになります。
要件に対象者延べ4人に健康診断を行うとあるように、一度に4人健康診断する必要はありません。長丁場になりますが同じ人に4年かけて4回行ってもいいし、2人に2年かけて健康診断を実施しても受給できます。
ただし、雇用してから5年以上雇用契約更新を繰り返している人を対象とはしないほうがいいでしょう。無期雇用転換ルールが適用される場合は対象外と申請時に言われる可能性があります。

こんな時でも使えます

すでにパートの方に健康診断を行っている場合でも、この助成金は使えます。法定外の健康診断を行うことを就業規則に定めることが要件になるので、条文を入れていなければ使うことができるのです。
人を集めるのが大変な昨今ですがパートタイムの方にも健康診断をすることで病気を予防し、継続して働いてもらえるようになるとよいでしょう。